山古志闘牛

 そんなわけで,長岡駅にダッシュして,無事バスに乗り込めました。バスは普通の路線バスを利用。乗客は一桁で,まあこれだとなかなかバスを運行するのは難しいなあ。でも,もうちょっと宣伝してもよかったんじゃなかろうか。なお,案内係の人によると,「今回は市が後援してるから無料」とのことでした。まあ数百円だったら払ってもいいんだけれどな。

 バスは途中SoftBankを圏外においやりつつ(最後の闘牛場は電波入りました),有名な(平成百景とやらに入っている)山古志の棚田を抜けていきます。この棚田での農作に牛を使っていたことから,闘牛が始まった,という歴史があるようで,棚田と闘牛は切っても切れない関係にあるようであります。
 途中,なんか面白そうな神社があったんだけれど,駐車場っぽいのもなかったのでレンタカーで乗り込んでても寄道できなかっただろうな。

 で,バスで無事到着。早めの時間ではありましたが,駐車場はそこそこ埋ってました。

日本の車窓から 駐車場と駐車場越しに見る
山の風景
牛の幟が立っております
山奥での開催ですが,日本財団のお金が入ってるようです
もちろん,競艇ファンは1割引とかそういうサービスはありません

 駐車場から競技場に向かう道には,ここ山古志の闘牛の案内が書かれております。石に彫った方が長期保存ができていいんでしょうけれど,読む側としては普通に白地に黒の文字の方が読みやすいんだよな……。
 あと,南総里見八犬伝にここの越後闘牛の話が掲載されているようです。残念ながら南総里見八犬伝がなんなのかを全く理解していないため,なんぜ南総の里見氏が越後闘牛について語っているのかさっぱり分かりません。そもそもこれが小説なのか随筆なのか何なのかすら理解してないレベルだからな。今ようやくWikipedia情報をを入手して,これが大長編伝奇小説だと知った次第なのであります。

 
消毒必須です
それより,日本財団テープに目が行ってしまいますが

 2000円払って入場。
 早い時間に着いているので,無事屋根の下の席をゲットできました。夏はやはり日陰に限ります。
 そして,売店でカレーやら何やらを買ったり,ふらふら歩いて待機中の牛を眺めたりして始まりを待ちます。このあたりの行動は,普段の草競馬なんかと一緒です。闘牛用の牛って,たしか戦い前は興奮させるためにいろいろエサに突っ込んでて,待機中から戦闘意欲満開のイメージだったんですが,鼻を繋がれてることもあってか,待機中は眠そうな目をしておりました。


本日の取り組み

売店
ほかにも店が出てました

入場券

なんかの神仏を祀った石碑ではと思ったのだけれど,
制限区域内だったので確認できず

 会場は,おそらく地震後に整備されたのでしょう。屋根に子供たちが書いたと思われるメッセージがあるスタンドがありました。また,湾曲した壁と屋根のスタンドは意匠的に非常に興味深い。地震をふまえて作られてるのでしょうから,おそらく強度的にもしっかりしてるんでしょう。まあ,全体的に,「自治体の意気込み(金の突っ込み)が感じられる競技場」ということであります。あ,もちろん日本財団様,すなわち競艇マネーの存在も欠かせないのだろうと推察します。つきましては,場外舟券場の併設をお願いしたいところであります。
 そんなわけで,屋根付スタンドは3つで,やはり夏場の開催だけあって,屋根の下はの席はうまっておりました。あと,地元の障害者団体とか用の観戦席が確保されてたりもしたので,そういうのに潜り込むといい座席を確保できるっぽいな。いずれにしても,僕はちょっと後ろ目の太陽の角度が変わらない場所に座席を確保して,あとはたたかいごとにふらふらしながら観戦しておりました。


 そんなわけで,まずは子供たちによる闘牛ダンス。闘牛という有形民俗文化財をモチーフにしたダンスなのだから,さぞかし和風な,ダンスというよりも舞踊的なものなのだろう,と予想していたら……予想は大きく外れ,なんかもはやお遊戯の域も大きく越えた,現代的な賑やかなダンスでした。最近の学校ではこういうをやるのか。でも,望月草競馬の昼休みのお遊戯は自分が見慣れたお遊戯だったなあ。
 あと,たまたまかもしれんけど,あくまでダンスは競技場の外,観客席の最前列でした。あくまで競技場内は神聖な場であるという相撲の土俵に似たこだわりがあるのかどうか。

おそろいのTシャツでした
下のダウ兄ってなんだろう
なかなか激しいダンスでした

 さて。子供たちのダンス披露が終わると,いよいよ闘牛大会のスタートです。まずは開会式。
 なお,この日の出来事をメモったスマホのメモデータは,スマホを修理に出した際にバックアップとり忘れたために既に失われております。従って,現在,半年前の記憶を思い出しながら鋭意作成中であります。

 開会式は,まず勢子さんたちが輪になります。その間,競技場内に酒と塩(味見してないから水や砂糖の可能性も否定できませんが,まあ普通に考えて酒と塩でしょう。そういえば,日本中で特定の場所を清める際に酒と塩を使うのかな?)が撒かれます。一周して酒と塩が円陣に戻ってくると,今度は勢子さんがそれぞれ酒と塩を身にまといます。なお,このとき酒を口に含んだ勢子さんは帰るときどうやって帰って行くのか,ちょっと今これを書いてて不安になりましたが,まあ部外者は余計なことを考えてはいけない。奥様方お疲れ様です。なお,子供に関しては酒はスルーされてたように記憶してます。
 そして,本日参加する各牛の名前を1頭1頭読み上げて勢子さんたちが拍手をします。1頭1頭の名前を読み上げて拍手して出迎えるというこの開会スタイルは非常にいい雰囲気でした。





酒と塩 場内を一周 酒と塩 拍手で出迎え 開会挨拶 この時点での混雑は
こんな感じでした
やはり人は日陰に集まります

 そんなわけで,最初の取り組みが始まります。最初は若い牛同士の取り組みで,経験が無いために鼻緒をつけたままの対決となります。こうして,徐々に盛り上がりを見せていくのであります。


 なお,個々の取り組みについてもメモった記憶がありますが,既にメモは失われているのでいかんともしがたいところです。無念じゃ。
 思い出す限りのことを書いていきます。

 解説のでもアピールされていたとおり,ここの闘牛の最大の特徴は,「勝敗をつけないこと」にあります。
 しかし,勝敗をつけないからといって闘牛自体がヌルいかというとそういうことは一切無く,完全にガチンコのぶつかり合いが行われています。つまり,ガチンコのぶつかり合いをしている牛を引き離すという極めて高難度の作業が勢子さんたちに要求されているわけです。そして,解説の方も特定の牛をして「この牛は荒い」などと完全に記憶されており,勢子さんたちもそういう牛を引き離すのに苦労されておりました。
 どうも,基本的には足を1本持ち上げると踏ん張りがきかなくなるようで,足を引っ張りあげるのに苦労されておりました。また,最終的に鼻をつかむと牛は力が入らなくなるようです。このあたりの牛の神秘は気になりますね。
 そして,この「大勢の勢子さんたちが牛を引っ張っている姿」は,どことなく「大きな蕪」の絵を思い出させてくれました。
 そしてこの終了のタイミング,誰がどうやって決めてるのか,とりあえず見てた範囲ではよく分かりませんでした。
 勝敗をつけないという意味ではある意味茶番ですが(牛がそれを学習して手を抜いてるのかどうかは僕には判別不能です),瞬間瞬間ではガチ,という意味では,プロレスに近い者なのかもなあ。

 宇和島では,勢子さんが1人,牛について横で牛を操って?おりましたが,ここでは基本的に勢子さんがまわりを取り囲んでかけ声で牛に発破を掛けます。なので,牛は基本的に自己判断で押したり引いたり攻めたり守ったりすることになります。
 勢子さんは,手を叩いて大きく開いて,「ヨシター」というようなかけ声を掛けていました。正確にはなんと言っているのか不明です。おそらく,かけ声を掛けるタイミングや方向,声の大きさや勢いなんかが大事なのだろうと推察するところですが,まあ一見の素人にはよく分かりません。

 勝敗をつけないからといってガチンコでぶつかり合っている以上,角が折れたりする牛はどうしても出てきます。
 そうなったら当然そこで試合終了。そして,その後は再び場内を清めるために酒と塩がまかれます。草競馬では故障馬や落馬があっても馬場を清めたりはしてなかった記憶です。

 他の闘牛地域でたたかっていた牛がここに移籍することもあるようです。アウトブリード・インブリードといった競馬的な発想があるのかは分かりませんが,とりあえず外の血を入れて活性化させようとしてるのではないでしょうか。もちろん,勝敗をつけるタイプの戦いに向いた牛と,ここのような勝敗つけない闘牛向きの牛とかもいそうです。こっちのほうが牛が長持ちするだろうから,オーナーさんの都合とかもあるのかな?

 オーナーと言えば,案外首都圏のオーナーさんも多くおられました。確かに,道楽として1頭持ってみようか,という気になるのは分からんでもない。

 牛は,上記の通り基本的に戦いが始まったら勢子さんの手を離れます。裏返すと,戦いが始まるまでは勢子さんが鼻を押さえて対峙させます。
 が,中には外からダッシュして突撃してあたる牛もおりました。イメージ的には馬鉢と騎馬戦の違いです。分かる人にしか分からん例えですんません。
 これ,攻める側ももちろん,受ける側がしっかり受けないと大惨事になると思うので,かなりレベルの高い技術的な裏付けがあるんだろうと思います。

 この闘牛,試合中は実況があります。この実況が非常にわかりやすい。初めて闘牛を見る観光客を想定した実況です。そしてこの実況,どこでやってるかわからなかったのです。一般に実況席というと,見通しのいい高い場所で,いかにもな場所に取組表ボードがあるのでてっきりそこだろうと思っていたら,そうじゃありませんでした。てことはどこだ?見たところ中継カメラなんてないからカメラ越しの実況なんてあり得ないし。……と,かなり長い間疑問は続きました。そして,最後の方になってようやく答えが分かりました。勢子さんでした。
 いやはや,まさか勢子さんやりながら実況もやってたとは。しかも,1日中ずっと同じ人。凄いなんてもんじゃないです。本当に凄すぎる。頭が下がります。草競馬と異なり,普段から見てる牛のことを話すので,話が非常に具体的で聞いていて楽しかったです。高ボッチの谷中騎手もそうですが,やはり詳しい人が実況すると見ている側は楽しいです。


ここに実況席があるかと思ったら

目が血走ってて凄い

みんなで引っ張る

鼻を捕まれて大人しくなると,
場内は拍手に包まれます

走って入場してくる
完全に,大きな蕪状態です 鼻が弱点ってのは牛全般共通なのだろうか
上から 最前列から この人が実況解説してた!! 最後は勢子さんたちがお見送り バス

 というわけで,途中若干角が折れたりすることもありましたが,総じて人的被害はなく,無事この日の全取り組み終了。
 最後は勢子さんたちが整列してお見送りされておりました。素晴らしい!

 闘牛は草競馬よりもなお行きづらい場所で開催されていて,なかなか足を伸ばすのも難しいんですが,全国組織があったりして,やる気があって素晴らしい。この日の実況解説されていた勢子さんを筆頭に,最後も(牛の後処理あるだろうに)整列お見送りなんてこちらこそ頭が下がります。
 というわけで,大満足の闘牛でした。できれば,もうちょっと上手く宣伝してあげたほうがいいと思うんだよなあ。

 てことで,いったん長岡に戻り,それから燕三条で泊まって弥彦に向かうという流れです。


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