いまごろ「いだてん」を見た
これを書いているのは2025年4月です。大河ドラマ「いだてん」は、2020年東京オリンピックに向けて国威発揚のために2019年に放映された、金栗四三氏と田畑政治氏を主人公としたドラマであります。つまり、これを書いている時点で放送から5~6年が経過し、東京五輪はCOVID-19のために2021年に開催され、2024年のパリ五輪も既に終わっております。
このタイミングでなぜ「いだてん」を見たかというと、「このタイミングだとDVDを借りやすかった」という極めて消極的な理由に他なりません。
なお、以下の文章はnoteにアップしたものを自分のホームページ向けにダウングレードしております。noteにアップした場合の著作権がnoteと私とどっちに残るのか、規約を見てもはっきりしなかったので、おそらくは私に残るのでここにアップしても問題ないでしょう。
駄文はここまでにして(なお、以下の文章に中身がある保証はしません)、以下本題。
毎週日曜日にテレビの前に座るのは無理なので、というかもはやテレビを見る習慣がないので、大河ドラマはDVDが出た後にレンタルで見ることにしています。テレビを見る習慣がなくなったくせに、DVDレンタルはする中途半端な老害です。
また、宮藤官九郎さんについては、好きも嫌いも無く、というか私がほとんどドラマを見ないので好きになる場面も嫌いになる場面もなく、多分彼の作品を見るのはいだてんが初めてです。
オリンピックと社会情勢のリンクが分かったのが最大の収穫
リンク、というかリンクしていない部分ももちろんあり、それも含めての趣旨です。
中学高校で日本史世界史を学ぶときに「そのころ○○では」といった横の繋がりを勉強するのと同様に、やはりエンタメ産業(8割国際・国内政治かもしれんけど)も横の繋がりが大事。第一次大戦も、関東大震災も、二・二六事件も、太平洋戦争も、インドネシアスカルノも、沖縄返還(前の状況)も、五輪史をオリンピックミュージアムで眺めるだけでは分からなかった。政治というのは常に動いており、オリンピックは国際政治の流れの中にあるということは、大河ドラマという形で見ることでよく分かりました。
1920年のアントワープ五輪、「平和になったから五輪が出来てよかった」程度に思ってましたが、そんな暢気な状態じゃなかった。あたりまえですよね。
1940年の東京五輪も、「そりゃあ戦争なんだから中止になるのは当たり前」程度に思っておりましたが、その前に決まったのがリットン調査団のあと、ラトゥール氏が日本に来たのは二・二六事件後というのは全く考えたことがなかったです。いやはや、本当に現場の方々は現場の中で戦っていたのだな。
情報の取捨選択が凄い
この、五輪を主題にした大河において、「日本人で初めてオリンピックでメダルを取った人」がこんなに軽視されるとは。そして、それを名前だけさらっと流してもストーリーが破綻しないとは。
個人的には、バロン西はちゃんと出してほしかったけど、まああのロサンゼルス五輪の流れならやむなし。
古今亭志ん生パート
あとからまとめて大河を見ることのメリットの1つは、大河について様々な情報をアップされている方々の豆知識情報を見られることです(特にいだてんは近現代ものなのにフィクション部分も多いので)。
デメリットの1つは、大河についての感想がどうしてもそういう情報をまとめておられる方々(コアな方々)のものに固まってしまうことです。いや「他人の感想なんか気にするな」と言われればその通りなんだけど。
というわけで、問題の志ん生パート。自分としては、落語は多少は聞きますし、落語の演目に沿ったストーリー展開にすることや、江戸の庶民(あくまで江戸の中心部の庶民であって、多摩の田舎者の庶民ではないのだが)から見た時代の流れやオリンピックの姿、スポーツが庶民に広まっていく流れなどは、志ん生パートを通して見ていくことで分かりやすくなる部分もあったので、個人的にはよかったです。
ただ、やっぱりたけしさんの滑舌はキツかった。そしてそのためなのかは分かりませんが、途中から出番が増えた五りんは個人的にはノイズでした。大河の中で架空の人物の出生の秘密で盛り上がられても、という気持ちはありましたし、まあ満州パートはまだいいとして、最終回も五りんに時間割かれてもな、という感想です。
なお、落語に興味がない人から見たら、志ん生パートが不要に思われるのはやむを得ないと思いますし、まあそれを覚悟の上で志ん生パートを入れたんだろうから、視聴率が振るわなかったのも仕方ないと思います。
印象的だった場面
いくつか印象的だったパートを。
学徒出陣と東京五輪開会式
やっぱりこの対比はグッときました。ここが重さなるのか。四三さんが実際に両方に立ち会ったのかは分かりませんが、実際に両方に立ち会ってた人はいたんだろうな。
「オレはどこで間違えた」
過去を振り返る田畑さんが、高橋是清さんとの会話を思い出すに至った場面。確かにあそこであんな発言があった。まさかあれがここに生きてくるとは。私は一気に見てるから多分数週間か1月程度前に見た場面だったんですが、実際に大河をリアルタイムで見ていた人からしたら、かなり前のシーンだったはず。
金栗さんとラザロの分岐
金栗選手が道を間違えるのは史実として知ってましたし、間違える場所も繰り返し出てきてたので軽く見てたんですが、あそこで間違えていなかったら死んでいたのは金栗さんだったかもしれない、という話は想像していませんでした。軽く見ていただけに心にきました。
そして、その後の五輪組織委員会?でポルトガル代表が「彼の死をムダにしないでほしい」的な感じでオリンピックのマラソン競技続行を訴えたシーン。個人的にはあれにも感動しました。よく考えたら本当に安全についてそんなノリで決めていいのか、それでいいなら近代五種から馬術はなくならないし、五輪外でもグランドナショナルの出走頭数減らないぞ、とかおもったりもしますが。まあドラマはドラマ。
コンゴと日本の対比&ザンビア独立
これも印象的でした。言わずとも思い出す日本のストックホルム五輪出場シーン。こういう第一歩がどの国にもあるのですよね。
北ローデシア→ザンビアの話は知りませんでした。ザンビアって東京五輪に選手を12人も派遣していて、うち黒人は2人のみとのこと。一歩間違うと面倒なテーマになりかねなかったんでしょうが、さらっとしていたよかったです。
三島弥彦がかっこいい+天狗倶楽部
本作で一番かっこいいなと思ったのは例によって嘉納治五郎さんなのですが、三島弥彦さんも純粋にかっこよかった。そして、天狗倶楽部が実在していたというのにも驚かされました。序盤のことなので色々と記憶が薄まってますが、ある意味いだてん最大の驚きかもしれない。
そういえば、オリンピックミュージアムに三島さん関係の展示ってあったんだろうか。自分自身三島さんのことを全く知らないまま行ったから、スルーしてた。記憶が残っているうちに再訪したいな。
金栗を切った田畑
聖火リレーの走者決めの際、金栗さんをバッサリ切って、未来に向けた若者を採用した場面。現実では「金栗を切る」場面があったのか分かりませんが、未来志向の五輪だったことが分かるとても印象的な場面でした。
肋木の謎が解けた?
小学校にあった肋木。あれを授業で使った記憶は無く、単に休み時間だかなんだかにあれにのぼったりした記憶しかありません。
その肋木がまさか歴史的に(いだてん的に)あんなに重要なものだったとは。永井道明さんもいいキャラクターでした。
懐かしの古式泳法
古式泳法から欧米式のクロールやらなんやらへの変化。明治になって当然に変わったのだと思ってましたが、ゲームじゃないんだからそう簡単に変わるわけがないのですね。当たり前のことなのに分かってませんでした。それにしても、そこからクロールを覚えた後のメダルラッシュ、凄すぎる。
ちなみに、私は中学校1年次の水泳学校でちょっとだけ古式泳法を習ったので、古式泳法は非常に懐かしく見てました。横泳ぎだけは今でもちょっとだけできます(多分間違って覚えてるので、「できる」というのは不正確なのだろうけど)。久々に古式泳法の名を聞けてよかったです。
五輪史
五輪が発展していく姿も見ていて興味深かったです。ヒトラーナチスが色々やったのは史実として知識はありましたが、放送史なんかは知らなかった。実感放送って凄いな。
選手村も、当たり前に最初からあったのだと思ってました。そんなわけないのよな。
ヨーロッパも色々
金栗さんとの友情が描かれたラザロ選手のポルトガル、まさかストックホルム五輪が初出場だったとは。なんかヨーロピアンがこぞってジャパニーズを馬鹿にしてるからヨーロッパ各国、特に西ヨーロッパは昔からでかい顔している印象でした。特にポルトガルなんてあれだけ海を荒らし回ってブラジルを植民地にしてたのに。
ピエール瀧と徳井義実
あとからDVDで見たので、リアルタイムで見られている方々のピエール瀧云々の話に全くついていけませんでした。というか、「え、あの足袋屋のおじさんピエール瀧だった?あんな顔だったっけ。メイクって凄いな」と、三宅弘城さんに失礼極まりないことを思ってました。
徳井さんについても、いろんな人の感想を見て、「あー、脱税騒動と重なったのか」と感慨深く思いました。それはそれとして、なんか関西弁ってだけであまりスポ根イメージが合わなかったので、ちょっと鬼の大松のイメージとは合わなかったです。吉本にはもっと凄い人いそうだけど。
ただ、あまりにスポ根な人にするとどぎつくなるから、あえてそうじゃない人にしたのかもしれないな。
女子スポーツの流れはよかった
女子スポーツの発展の流れは、興味深かったです(あとから様々な人の感想や解説を見るとさらに勉強になります)。今は当たり前のことが当たり前じゃないということをドラマでみるとやはりインパクトが違いますね。
金栗~田畑の流れだと本題からズレるんだろうけど(特に東京五輪に向けて女子バレーボールだけにスポットライトがあたるのは違和感がある。特に体操やレスリングの関係者からクレームでなかったのだろうか)、それでもまあ自分としては勉強になってよかった、という部分が勝ります。
ストックホルムに行きたい
私はメタボオヤジなのでマラソンなんてもってのほかですから、「ストックホルムで金栗が走ったコースを自分も走ってみたい」なんて夢にも思いません。でも、どうやらストックホルムには競技場が残っているようですし、競技場にはなくなるまえに行ってみたいな。
あと、マラソン折り返し地点に記念碑があることは確か紀行にも出てきてたと思いますが、その場所が検索してもなかなか出てこないのはどういうことなんでしょうか。見つけ出すのにかなりの時間を浪費しました。
(ちなみに、「Kyrkvägen 2, 192 72 Sollentuna Marathonstenen」あたりで検索すると出るはず)
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